嶋は化学出身であるが化学会社に就職できず、ビジコン社に入社した。嶋の入社したビジコン社でも電卓を手がけており、シャープよりも更に高性能で安価な電卓の開発を計画していた。ビジコン社は、国内やアメリカで自分達の欲するＬＳＩを開発してくれる企業を探したが、なかなか見つからなかった。最後に訪れたインテル社でやっと話がまとまり、両社で電卓用のＬＳＩを開発することになった。

　インテル社と言えば今でこそ、世界最大の半導体メーカであるが、1968年当時インテル社は従業員１００人足らずのベンチャー企業であった。そこで嶋は、インテル社のホフ,ファジンと電卓用ＬＳＩの開発をすることになった。この時電卓用でなく、プログラムでいろいろな機能を実現できる４ビットＣＰＵというアイデアが生まれ、それを実現したのが世界最初のマイクロコンピュータ4004である。1971年にインテル社より、4004マイクロプロセッサファミリーが発売されている。

　４ビットＣＰＵのアイデアはホフ（USP.3821715)であるが、それを実現するための各種技術開発は嶋が行っており、実際の設計もほとんど全て嶋が行っている。その後、嶋はインテル社で発売され、ベストセラーになった名作、８ビットＣＰＵ8008を１人で設計している。さらにインテル社を退社後、ザイログ社であの有名なＺ80，Ｚ8000を設計している。当時重要なＣＰＵは、嶋がほとんど手掛けたといっても間違いない。

　こうしてみると、嶋の設計,開発能力の凄さがうかがえる。また大学で学んだ自分の専門でないことにおいて、すばらしい仕事をしたことに対して、我々は見習うところがあると思う。
　今パソコン用のＣＰＵとして、ペンティアム200MHzだとかペンティアムPRO等と話題になっていますが世界最初のＣＰＵは、日本人が設計,開発したということを我々は誇りに思う。

祝　先日（１９９７・１１月２５日）新聞を見ていたら嶋正利さんの京都賞（先端技術部門）受賞のニュースが載っていました。おめでとうございます。

現在興味を持っていることは？という質問にこう答えています。
「 一つのプロセッサーで複数の命令を並列して処理できる分散処理プロセッサーです。従来のプロセッサーの進化は４ビットから８、１６、３２、６４ビットへと１０人分の仕事ができるスーパーマンを作る方向にありました。しかし、同じ仕事をさせるためには１０人連れて来てもいいという考え方です。プロセッサーの設計は、ある結論に向かう自分の思考過程をそのまま埋め込んでいく作業。一度やったら病み付きになる面白さです。」